それでは0以外の他の点にはどんな意味があるのか、
あるいは0以外の点はどんな概念を持つのか、
それを見ていきます。
まず1番に
考えてみたいのは無理数です。
無理数の代表格は円周率ですね。
これはπです。
およそ3です。
3.145926535897‥
小数点以下に予測のつかない数字が延々と続きます。
まさに終わりのない、
決してたどりつくことの出来ない点、
それが無理数です。
けれども無理数もきちんと
「そこにある点」なんですね。
たどり着けないからといって、
円周率が「存在しない」訳ではありません。
簡潔に表すことが出来ないから記号で、
もしくは数式のままで、
そこに「存在すること」を表しているだけなのです。
でも数字であらわすと、
無理数には本当にどこまで行っても
たどりつくことが出来ません。
というか、無理数は
絶対にたどり着くことのできない点なのです。
「そこに確かにあるのに、
どこまで行っても確定することのできない」点、
それが無理数です。
だから「存在する円周率」は
記号で表記するしか方法がないのです。
さて、ここで大事なことは
円周率に代表される無理数は
「存在しない」訳ではないということです。
単に数字で表記出来ないだけであり
ちゃんとそこに「存在する点」だという認識は必要です。
この「存在する点」を理解するために
今度は循環小数を考えてみましょう。
0.333…と小数点以下に
同じ数字がエンドレスに続く点、
これが循環小数です。
循環小数も確かにそこにあるのに
「少数点の表記」では
やっぱりたどりつくことは出来ません。
けれどもこの循環小数は
1/3と分数表記にすると正確に確定することが出来ます。
これは3倍すると1となる数字で
キチンと安定してますよね。
0.333…と1/3は「同じ点」を表します。
このように少数点表記では
決してたどり着けない「循環小数」も、
分数表記でならちゃんと確定する事ができました。
これは循環小数も円周率と同じように、
たしかにそこにある「存在する点」だからです。
しかし、どこまで行っても続く
「終わらない一つの数字」が、
確定された状態で「存在する」とは
一体どう言うことなのでしょうか?
1/3と確定できる点と
0.333…と表記しきれない点が、
全く同じ点である、とは、
一体どういう理屈なのでしょうか?
片方では確かに存在する点が、
基準を変えることによって存在出来ない点になる、
ということですかね?
いやいや、どちらも同じ点であり、
それは存在する点ではあるけれど、
まだ数列が対応できてないだけでしょうか?
そこでいま一度、
我々が最も安心して確定することの出来る点、
「普通の整数(自然数)」の性質を確認しましょう。
数列上のいたるところに均等に配置されて
確かに存在する信頼できる点、
それが普通の整数(ここでは自然数のこと)です。
あるのかないのかわからない前者たち
終わりの見えない無理数などと比べると、
ややこしくもなく、潔ぎのよい普通の数字です。
わたし達も整数はどこにありますか?と聞かれても
ここです!と
自信を持って示せることでしょう。
えっ、どこですか?
あなたの指の先に!?
よくわかりません!
よくわからないのでその点を
1000倍ほどの大きさに拡大してみるとしましょう。
先ほどあなたが示した小さな点は、
今度は結構大きな円であったことがわかります。
これは点ではありませんね。
おそらくその拡大された黒丸の中心に、
点の本当の本体はあるのでしょう。
ではその円の中心をもっともっと、ずっと、
出来る限り拡大してみましょう。
「整数の場所」にあった確かな点は、
果たしてその中にありますか?
何度くりかえしても、
幾らくりかえして見ても、
点の本体は見えて来ません。
1.0000…
2.0000…
3.0000…
つまりわたし達が
確かに存在すると思っていた普通の整数も、
実は決してたどりつくことの出来ない、
「循環小数の仲間」だったのです。
「確かに存在するのに、
何処にも見つからない点」
決して言葉のあやではありません。
全ての点が探せないことが真実なのです。
円周率が記号で表わすことしか出来なかったように、
あるいは分数で表せる点が終わりのない循環小数だったように、
実は全ての整数も
記号で表わすことしか出来ない点だったのです。
1や2や3といった「記号」でしか‥
「確かに存在するのに
何処にも存在しない点」
それが数列上の「全ての数字」に与えられた
点の本来の性質です。
それは例えわたし達に何と名付けられようと、
変わることのない「事実」です。
無理数や循環小数だけが
特別な「存在しない点」ではなかったのです。
整数を含む全ての点が
決して確定することのできない
「存在するのに存在しない点」です。
円周率は何処にあるのか?
終わりのない特別な数字へと向けられてきた
わたし達の疑問は、
本来は全ての数字、あらゆる点へと
向けられるべきものだったのです。
全ての点はあるのに何処にも探せない
0と「同じもの」です。